標高2000mの高原を渡る風はいつも爽やかです。アルペンルートが開通する春には5m近くもあった雪も日毎に解け、6月には埋もれていたダケカンバが起き出して緑の若葉を展開させます。
 この辺りは亜高山帯を代表する針葉樹のオオシラビソが山腹に林立し、ルリビタキやアカハラ、キクイタダキの澄んだ声がそこかしこから聞こえ、草原からはビンズイ、カッコー、ホトトギスの声が響いてきます。東西20km、南北3km、60平方kmの広大な弥陀ケ原は、立山を代表する山岳別世界。その高原を心ゆくまで散策する周遊歩道があって、誰もが安心してウオーキングを楽しめます。点在する水溜まりを立山では「がきの田」と呼びますが、光を受けてキラキラと反射する水面の周囲には、モウセンゴケやミズゴケが生育し、ワタスゲやキンコウカ、イワショウブ、またゼンテイカやワレモコウなどの花々が咲き乱れます。9月中旬に始まる紅葉は、やがて全山錦繍を身にまとうあでやかさ。山のお姫様ナナカマド、そのお供にはオガラバナ、ミネカエデの黄葉と、五色に染め分けていきます。
 弥陀ケ原で見逃せないのが、立山火山の爆裂火口。その立山カルデラ(鍋状火口)を見学できるのがカルデラ展望台です。駅から15分ほどの所にある穴場で、東西6.5km、南北4.5kmもある火口が、切り立った500mの断崖(火口壁)から眺められます。また、火口を取り巻く山々の眺めも絶景であり、右から薬師岳、越中沢岳、鳶ヶ岳、鷲ヶ岳、ザラ峠、鬼ヶ岳、獅子ヶ岳、竜王が一望できます。眼下のカルデラ底には、神秘的な湖面を見せる刈込池、湯煙の立ち昇る新湯の池があり、立山火山は活火山であることを実感させてくれます。

 



 日本最古の木造の山小屋、国指定重要文化財「立山室堂」が建つ室堂平。近くには立山の聖地「玉殿の岩屋」や主峰雄山の直下から湧出する。「玉殿の霊水」などがあります。ターミナルの周囲は3000m級の山々、立山三山の浄土山、雄山、別山をはじめ、剱岳、大日岳、室堂山、国見岳、天狗山など、八葉蓮花に見立てた山脈があります。そのうち、立山火山に由来する山は黒っぽい安山岩から成り、造山運動により隆起した山は花崗岩や飛騨変成岩などの白っぽい岩石から成っています。ですから、立山の主峰雄山は火山ではありません。山頂西側直下には、山崎直方博士が発見した氷河地形、山崎圏谷(カール)があり、他にも氷河を推定する遺物があって、かつては天狗平や弥陀ケ原辺りまで氷に覆われていた時代があったとされています。氷河期の遺留種ライチョウ、ハイマツや高山植物、またヒカリゴケなどもその名残です。地獄谷は火山の様相をいまに残し、煮えたぎる湯だまり、むせかえる噴煙、熔融硫黄の溶岩流や鍛冶屋地獄と呼ばれる活発な噴気孔があります。